エンジョイサッカーという新たな考え方とその取り組み|佐藤憲一さん(浦和美園エンジョイサッカークラブ)

浦和美園エンジョイサッカークラブ 佐藤憲一さん

 浦和美園に住んでいると、プロサッカーに 触れる機会が多いため、将来は「プロサッカー選手になりたい」というお子さんも多いのではないでしょうか。
 プロスポーツ選手になるためには様々なカテゴリーで常に結果を残す必要があり、指導者もこどもたちに夢をかなえてほしいという思いから厳しめの指導を行い、時に行き過ぎた指導が話題になることもあります。
 厳しい指導を受けたこどもの中には  大好きで始めたサッカーを嫌いになって辞めてしまうケースがあります。

 今回は、「まずサッカーを楽しむ。楽しいから上手になる」という低年齢のこどもたちへの選択の幅を広げる新たな取り組み「エンジョイサッカー」という考え方について主催している佐藤憲一さんにお話を伺いました。

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エンジョイサッカーのきっかけ

「エンジョイサッカー」を始めたきっかけをお聞かせください

佐 藤「サッカーで人生が豊かになっていますか?」「今日や明日の試合や練習が心から楽しみですか?」「ボールを蹴ることを心底楽しんでいますか?」「監督やコーチとの関係にストレスはありませんか?」

 こう聞かれて、自信をもって「はい」と答えられる子供や親は、どれぐらいいるでしょうか。Sportsという語の語源は「気晴らし」です。では、気晴らし、とは何でしょう? 好きな時に好きなだけやり「心身を活性化させる活動」です。

 浦和美園は浦和レッズのお膝元ということもあり、サッカー熱が非常に高いのは周知のとおりです。サッカースクールや少年団、クラブチームは多数あり、多くの子供達が切磋琢磨しています。それは「強化」という面からは素晴らしいことです。

 一方で「普及」という観点から見れば、どうでしょうか。サッカーをやってはみたいけれど、一歩踏み出せない子供達がたくさんいます。サッカーの上手な子たちの邪魔になるんじゃないか?公園でやったら大人に怒られるのではないか?そういう不安に手を(足を)差し  伸べるのが、真の「普及」の姿であると考えます。

ンジョイサッカー活動開始

お子様の映っている写真は画像加工によりボカしております。

ー「エンジョイサッカー」はいつから始められたんですか??

佐 藤約1年前の2020年に、そういう子供達のために、地元の小学校の協力を得て、「エンジョイサッカー」 活動を開始しました。

-「エンジョイサッカー」を行う上でのルールはありますか??

佐 藤細かなルールなどは設けていませんが、以下の内容にご理解いただいてから始めてもらっています。

  • ミスをしても誰も怒りません。
  • 下手でも誰にも笑われません。
  • できないことがあっても、恥ずかしくありません。
  • 親の当番も遠征の送迎もありません。
  • お金も一切かかりません。

見学させていただいて気づいたことですが

ー 必ずあいさつをしなくてもいいんですか?

あずおスポーツ教室などでよく見かけるあいさつですが、必ずしないといけないのかと思っていましたが、あいさつしなくても大丈夫なんですね。どちらかというと教える側の佐藤さんからこどもたちに話しかけに行っているのが印象的だったのですが。

佐 藤もちろん、すすんで あいさつをする子もいます。その一方で、あいさつをしない子もいます。それは、単なる性格の違いですから、それはそのまま受け入れて、過剰な反応はしません。あいさつができなかったり、苦手だったりする子たちに、あいさつを強制するのは、サッカークラブの本質的な役割ではありません。サッカーをやりに来ている、それだけで十分です。

 そのうえで、打ち解けて話しているうちに自然とあいさつをするようになる子も結構いますよ。むしろ、部活などであいさつが強制されている方が、異様に見えてしまいます。上下関係を固定し、確認するためのあいさつなら、いらないと思いますし、うちのクラブの風土には合いません。

ー 基礎練習もやりたくない練習はやらなくてもいいんですね

あずお練習が進むにつれて、何人かのこどもが急に休憩に入ったのでビックリしましたが、やりたくない練習はやらなくていいんですね。

佐 藤はい、休みたくなったら、自由にどうぞ、と言っています。水分もどんどん無断で補給してもらっています。

 そもそも当クラブでは「練習」という言い方をしたことはなく、練習の代わりに「活動(activity)」と言っています。「活動(activity)」とは、あくまでアクティヴ(active)に、つまり、能動的に行われるものですから、自分がアクティヴになれない時は、休んでOKです。

 仮に多くの子供が休みたい、と言い出したら、それは子供達の責任ではなく、活動のメニューを作るこちらの責任ですから、メニュー自体を変更しなければいけません。

 子供といえど独立した人格ですから、何かをする/しないの選択をする権利は常に保証されているはずです。大げさに聞こえるかもしれませんが、このような環境においてこそ、子供達は自分で考え、判断する力を養うことができるのではないか、と思っています。

ー 活動(activity)の際も「これをやると、こういうプレイができるようになる」としっかりと説明されているんですね

佐 藤「いまよりももっと楽しくサッカーをやるためには、どうすればよいか?」という視点から、子供達にそれぞれの活動の意味を問いかけ、言葉にデモンストレーションを織り交ぜながら、子供達なりの意義を見出すように促しています。決まった答えを教え込むのではなく、とにかく考えさせて、自分でやらせてみます。

 そこで、上手くいかないときは手助けをするよう心掛けています。取材にいらしていただいた時は「どうすればパスがつながるか」というテーマについて、さまざまな意見を交わしていました。パスコースを作るためにはどうすればよいか、シュートに効率よくもっていくためにはどうすればよいか、ボードで考え、補足説明をし、実際にゲームでトライしてもらいました。

 子供達にも理解できる言葉で説明をしているうちに、皆、自分で考えて動くようになります。そうすることで、もっとサッカーが楽しめるようになってゆくと思います。そして、楽しくなれば、よりいっそう、さまざまなことを知りたくなるはずです。そうした相乗効果のサイクルに持って行ければ何よりです。

ー ユニフォームがあるんですね

あずおエンジョイサッカーなので、みんな動きやすい服装でやっているのかと思いましたが、ユニフォームがあるんですね。これは絶対に購入しないといけないものですか??

佐 藤せっかくですから、一体感を醸し出すために作成しましたが、購入は義務ではありません。デザインは、活動のメンバーでもあるうちの娘(小5)に任せました。みんな結構気に入ってもらえているようで、着用率は高めです。

 もちろん、好きな恰好、例えば、好きな選手やクラブのユニフォームで参加していただいても、まったく問題ありませんし、放課後に活動をするときなどは、みんなほぼ普段着でやっていますよ。

ー「エンジョイサッカー」は現在どのくらいの周期で活動されていますか??

佐 藤子供たちは、週に1~2回集まって、一心にボールを追いかけてゴールを目指す。そこで、勝負を楽しみ、楽しみを勝負する。ただそれだけの活動です。しかし、実はそれこそが、スポーツの原点であるのかもしれません。

のサッカータウンを目指して

 
佐 藤ミニゲームに負けては泣き、勝っては 泣く子供達の姿の先には、上手い・下手や、経験・未経験に関わらず、サッカーと共に生き、サッカーを愛する大人の姿が見えます。20年30年先の浦和美園が、そのような大人たちで満たされる街になるとき、ここは真のサッカータウンになることでしょう。そんな思いで、今週も来週も、子供達とともに、楽しんでいます。

 

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後のエンジョイサッカーの活動はどうなる

-最近、JFAの公認指導資格を取得されましたよね?

あずお佐藤さん、先日、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)公認指導者ライセンスのC級を取得されましたよね。なぜ資格を取得されたんですか??

佐 藤「エンジョイサッカー」だからといって、指導者もいい加減で良いわけがありません。むしろ、「エンジョイサッカー」であるからこそ、指導者はより広い視野と知識を持ち、サッカーの適切な普及に寄与しなければなりません。何しろ、勝たせることが目的ではなく、サッカーを通じて人生を豊かにすることが目的なのです。こんなに難しい仕事はないと痛感しています(笑)。

 C級ライセンスはサッカー指導者の登竜門といってもよい資格です。このライセンスは、Jリーグでも指揮を執ることができるS級やA級との連続性が担保されており、ベースの部分はプロの指導者と共通です。わたしがそのような資格を持つことにより、当活動に参加するこどもたちも、サッカーファミリーの一員としてのプライドを持ってくれたらうれしいです。

JFA 公認指導ライセンスC級
基礎Ⅰ(指導者の入門)
アマチュアレベル(子どもから大人)を対象とした指導の基礎を理解している指導者資格。

  

予備知識【JFA 公認指導ライセンスS級】
日本サッカー協会が公認する指導者の免許制度で最高位の指導者資格。
Jリーグ、WEリーグおよび日本代表の監督を務めるために必要な免許です。

-今後、エンジョイサッカーの活動はどうなっていく予定ですか

あずお現在、地域のボランティア活動の一環で活動されていますが、今後はどのように活動されていくご予定ですか?予定などがありましたらお聞かせください。

佐 藤 今後も絶対に変えたくないのは「会費を徴収しない」という一点です。
当活動は「消費」や「習い事」とは別の次元での子供達の楽しみのために構想されています(ただし、有料のグラウンドでやる場合は使用料を割り勘でいただいています)。もちろん、会費を徴収しているクラブや少年団を否定するものではありませんが、かつての遊び場がそうであったように、地域の広場にやりたい子たちが集まって、やりたい遊びをする、その一環としてのサッカーをプロデュースしている以上、「お金をください」とは言えません。

 加えて、お金をいただくと、そこに責務が発生します。そうすると、子供達がやりたくなければやらなくてもよい、とは言えなくなりますよね。お金をいただいているのだから、皆一様に活動させなければ、となってしまいます。お金と引き換えに子供からもコーチからも自由が奪われてしまうのであれば、ボランティアで十分です。

 保護者の方々も、当番など無い中で、手の空いている人がサッカーゴールの組み立てや解体、活動後の整理・清掃を手伝ってくださいます。そしてそれを見ている子供たちが頼んでもいないのに自然と、準備や片付けを積極的に担当してくれます。

 今後も、お金を介さない形でどこまでできるか、さまざまな方法を模索しながら、ひとつのモデルを構築してゆくことができたらと思います。目下、活動を支えてくれるスポンサー様、大募集中です!

ーこどもをエンジョイサッカーに参加させたい場合は

あずおこのインタビュー記事をお読みの人が「うちのこどもにもエンジョイサッカーをやらせたい」と思った場合はどうすれば参加できますか?

佐 藤 下記メールアドレスまでご一報ください。こちらから折り返し、メンバー間で使用している情報共有無料アプリの招待状をお送りいたします。活動の予定はそちらにすべてアップされておりますので、そこでスケジュールを確認し、活動回ごとに参加表明をしていただく形になります。

現在、1回の活動日につき、参加人数上限15名程度に設定しています。
サッカー経験、性別は不問。年齢は1年生以上。
主な活動場所である美園小学校まで徒歩または自転車で来られる方。

仲間とサッカーを楽しめるマインドの方。保護者方の参加も歓迎しております。ただし、競技指向が強く、サッカーの技術や戦術等を教えてもらいたい方は、ご遠慮ください。

以上、どうぞよろしくお願いいたします。

サッカーの普及活動である「エンジョイサッカー」という考え方。
当サイトでは今後も佐藤さんの活動を追っていきたいと思います。
取材にご協力いただきました佐藤さんをはじめ、エンジョイサッカーのみなさん、ありがとうございました。

取材協力:佐藤 憲一さん(浦和美園エンジョイサッカークラブ)
撮影協力:浦和美園エンジョイサッカークラブのみなさん
取  材:浦和美園ドットネット
撮  影:浦和美園ドットネット

 

 

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浦和美園エンジョイサッカークラブ

浦和美園エンジョイサッカークラブは「JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー」として活動をしております。

賛同テーマ

  • 『ずっとEnjoy♬ 引退なし』賛同パートナー
  • 『みんなPlay! 補欠ゼロ』賛同パートナー
  • 『だれでもJoin♪ 女子サッカー』賛同パートナー

団体の理念・ビジョン・方針

生涯、サッカーとともに

主な活動内容

年齢、性別、サッカー経験の有無にかかわらず、サッカーを共にプレイすることによる、幸せなコミュニティの創生

私たちのグラスルーツ宣言

競争から共創へ―サッカーを通じてだれもが幸せを感じるコミュニティをみんなで共に創りだします

上記宣言を具現化するための活動内容

<引退なし>
未就学児から保護者までが助け合い、楽しみながら活動してゆきます

<補欠ゼロ>
選手たちを競争させてふるい落とすようなことはせず、全員が対等に試合に出ます

<女子サッカー>
未就学児から保護者まで、女性のサッカー活動の機会を確保し、そのための環境を整備してゆきます

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